化学生命・化学工学専攻(工学部 化学生命工学科)

教授

門川 淳一

バイオマス多糖を使って新しい機能性環境低負荷材料を創る

石油などの化石資源代替資源としてのバイオマス多糖とは

 我々は、化石資源から変換生産されるプラスチック等の有機材料を使って豊かな生活を営んでいます。しかし、有機(高炭素)資源としての化石資源は有限であり、代替資源の活用による材料の構築は次世代に向けて成し遂げなければならない重要な課題です。植物繊維中に含まれるセルロース(*1)やカニの甲殻に含まれるキチン(*2)などの多糖(糖がつながった高分子化合物、*3)は地球上に最も豊富に存在するバイオマス高分子であり、最も有力な石油代替資源です。当研究室では、多糖高分子の新規なナノ集合体(*4)構造を構築することで高度な機能を発現し、新しい材料としての利用形態のための基礎研究を展開しています。

図1 キチンナノファイバーの電子顕微鏡写真ノファイバーの電子顕微鏡写真

地球上に最も豊富に存在するバイオマス多糖からの新しい機能性材料とは

図2 セルロース柔軟材料

 例えば、キチン分子を様々な手法によりナノスケールで規則的に集合化させてナノファイバー(*5)を構築しています(図1)。ナノファイバー化することで、通常、水中で凝集するキチンを効率よく分散させることができ、生体材料などの新しい利用形態へとつながります。また、繊維状高分子であるセルロースをイオン液体(*6)と呼ばれる媒体と複合化させることにより、結晶性(硬さ)を軽減させて、ゴムのような柔軟性を付与することができます(図2)。この技術を利用して成型加工のできるセルロースプラスチックの開発を目指しています。

*1 グルコースから構成される天然多糖であり、地球上で最も豊富に存在する有機資源である。高い結晶性のため木質中の細胞壁など構造物質として機能するが、加工性や溶解性に乏しい。
*2 カニやエビなどの甲殻の主要成分であり、セルロースに次ぐ有機資源である。セルロースと同様に高い結晶性を有するため、加工性や溶解性に乏しく、ほとんどが未利用である。
*3 グルコースなどの単糖がつながった高分子化合物である。単糖構造や結合様式の多様性から、天然には非常に多くの多糖が存在する。
*4 高分子はナノスケールで集合化することで、より大きな構造体を構築し、機能性材料として利用することができる。種々の集合化手法により、同じ高分子から異なった集合形態を構築することで違った性質や機能が発現するのが特徴である。
*5 高分子をナノスケールで繊維状に集合化させることで様々な特徴を付与することができる。例えばセルロースナノファイバーは、軽くて強い、比表面積が大きい、熱による寸法変化が少ないなどの特徴を有する。
*6 イオンのみから構成される塩であり、イオン間の静電相互作用を小さくする構造のため融点が低くなり、100℃以下で液体の性質を示す。難溶性化合物を溶解する溶剤として知られている。

Profile

化学生命・化学工学専攻(工学部 化学生命工学科)

教授

門川 淳一

1964年生まれ。東北大学工学研究科博士後期課程修了、博士(工学)。山形大学助手、助教授、東北大学助教授をへて2014年より現職。1996~1997年マックスプランク高分子研究所客員研究員。授業は有機化学などを担当。専門は高分子材料、多糖化学など。原著論文200報以上。高分子研究奨励賞、セルロース学会賞、Royalty Award, Malaysia, IAAM Medal を受賞。趣味は街探索、醸造酒を嗜むこと。

学生(受験生)へのメッセージ

 私は、もともと石油などの化石資源を原料とした合成高分子の研究からスタートしました。しかし、偶然につぐ偶然が重なって天然高分子である多糖を扱った環境低負荷材料の開発に関する研究に携わるようになりました。特に、私はこれまで4人の先生の下で研究を行ってきて、それぞれの先生に出会うたびに新しいことを学び、今の研究テーマにつながっています。このようなことから、人との出会いをいつも大切にしています。また、数年で忘れ去られて浮草のように流れていく研究ではなく、世界を相手に歴史に残る基礎研究を行うことを心がけています。成果を出すことは容易ではありませんが、チャレンジング精神と好奇心を持って研究をエンジョイすれば、必ず面白い結果が得られると信じています

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