寄生性カイアシ類の種多様性
地表の7割を覆い、生命の源でもある海。そこに様々な動物が暮らしていることは、多くの人が知るところでしょう。しかし、その多様な動物がそれぞれ寄生生物を持っていることは、あまり知られていないのではないでしょうか。私の研究室では、寄生性の甲殻類に注目して種多様性研究を行っています。甲殻類とは、エビやカニの仲間に代表されるグループであると聞けば分かりやすいでしょうか。特に私が専門としているのは、カイアシ類(コペポーダ)と呼ばれる小さな甲殻類です。多くのカイアシ類は、海中を漂う1 mm程度のプランクトンとして認識されていますが、実際には魚、貝、サンゴ、ナマコ、ヒトデ、ホヤなど様々な動物の体表、あるいは体内に巧みに暮らす種が数千以上も知られています。究められた寄生術の産物なのか、その見た目は甲殻類であることを疑わせる物も少なくありません。また近年の研究からは、まだまだ多くの未知の種の存在が明らかとなってきました。そこで現在私は、世界中の海に出かけて野外調査を行うことで、寄生性のカイアシ類の種多様性を明らかにするべく日夜格闘を続けています。
鹿児島の海や川に暮らす共生および寄生生物
寄生生物と聞くと、「気味が悪い」あるいは「危険だ」などの感想を持つ人が多いのではないでしょうか。しかし、寄生生物は人間に危害を加えることを生きがいとしているわけではないし、実際には害のない種のほうが多いくらいです。害のある者ばかりが有名になり、大半の種は人の目に触れることも無いまま、平和にひっそり暮らしているのが現状です。それゆえ、どういう種が存在するのか?あるいはそれらはどのような生態を持つのか?など、わかっていないことだらけなのが現状なのです。豊かな自然が残る鹿児島の海や川は、日本でも有数の動物の宝庫ですが、それはすなわち、ここが未知の寄生生物の宝庫でもあることを意味します。それはまるで、金の鉱脈です。私の研究室では、鹿児島の川や海に暮らす様々な動物に着目し、それらを宿主とする様々な生物の分類や生態の研究もおこなっています。大学近くの海や川で、日本からは未記録の生物を発見し、彼らの未知の暮らしぶりも明らかにできる、これは鹿児島大学の大きな魅力の一つと言えるでしょう。