スマホは充電が必要
皆さんが普段から使っているスマートフォン,ディジタルカメラ,ゲーム機などには,近年の高性能化に伴い無線通信機能がついているものが多く,より便利なものに進化してきました.通信は無線化されているため,有線接続のデメリットである電線の煩わしさから開放され,場所を気にせずどこでも使えるようになっています.しかし,電力供給は機器内蔵のバッテリからであり,それらの機器を使用する場合には常に電池残量を気にしながら使っている場合がほとんどであると思います.バッテリが少なくなれば,有線接続による充電は必須です.一部の機器では,置くだけ充電など有線接続は不要なものもありますが,機器同士が接触している必要があること,位置ずれに弱いなど利便性に乏しく,広く普及しているものではありません.そこで,電力供給も通信のように無線化し,場所によらずどこでも使える,「どこでも電源」が実現すれば,スマホなどの電子機器は「完全ワイヤレス化」でき,電池残量を気にすることなく機器利用が可能となります.我々の研究グループでは,電子機器向けのワイヤレス通信とワイヤレス給電を両立するためにはどうすれば良いのか研究を行っています.
スマホ以外の電子機器にも応用が可能なワイヤレス給電技術とは?
ワイヤレス給電技術は,大きく分けて図2に示すような3通りに分類されます.その中でも我々は特に電波を用いたタイプについて研究を行っています.電波を用いたワイヤレス給電は,宇宙太陽発電の分野を筆頭に研究が進められていますが,我々はそのような巨大なシステムではなく,電子機器向けのシステムについて検討しています.システム全体の設計から,システムで使う部品の回路設計まで,幅広く手がけて視野を広く持ち日々研究を進めています.また,それらの基礎理論はパソコンがあればシミュレーションできますが,工学部ならではの「ものづくり」を重視し,設計だけではなく,試作・測定まで行い,提案システムの有効性について検証しています.図2では,ワイヤレス通信系とワイヤレス給電系の両立性についてシステム全体の検証実験を行っている様子です.実験の結果,機器間の距離が最大1m離れている場合でも通信と給電が両立できることが分かりました.現在は,全体効率の改善,機器の小型化や簡略化に向けて研究を進めている段階です.皆さんも夢の技術であるワイヤレス給電技術について研究してみませんか?