人体の毛細血管網を再現するテクノロジー
病気や事故により臓器の機能が著しく低下した場合、その治療法は臓器移植しかありません。臓器移植を実施するためには臓器を提供する人(ドナー)が必要ですが、日本を含め多くの国ではドナー数が少なく、ほとんどの患者はこの治療法を受けることができません。もし、臓器を作り出すことができれば、ドナーが必要なくなり、すべての患者が臓器移植を受けることができるようになります。
臓器の中の細胞は、そのすぐ側をとおっている毛細血管から酸素や栄養の供給を受けることで生きています。もし、毛細血管がなければ臓器中の細胞は1時間と生きながらえることができず死んでしまいます。つまり、臓器を作るためには毛細血管網を再現できるテクノロジーが必要なのですが、その困難さから未だ開発されていません。独創的なテクノロジーにより毛細血管網を作ること、さらにはそれを利用して臓器を作ることにチャレンジしています。
細胞がその細胞らしさを発揮できるヒドロゲルを作るテクノロジー
毛細血管網を再現するだけでは臓器を作ることはできません。再現した毛細血管網の周囲で細胞を増やす必要があります。ヒトの体の60%は水でできており、骨などを除くと私達の体は柔軟なヒドロゲルであると言えます。つまり、ヒドロゲルは臓器を作る際に必要な細胞を増やすための“場”として適しています。一方、これまでのヒドロゲルは、細胞に対して毒性がある化学物質を含んでいるものが多く、細胞を増やすための場として好ましくありませんでした。そこで、毒性の高い化学物質を使用しなくてもヒドロゲルを作ることができる新たなテクノロジーの開発を行っています。