化学生命工学プログラム

助教

満塩 勝

ガラス棒がセンサーに変身!

ただのガラス棒が屈折率センサーへ

私たちが見たり、触ったり、味わったりと普段何気なく行っていることは、全て視覚、触覚、味覚というセンサーによって明るさや化学物質の種類、濃度などの情報として変換され、脳で処理されます。人類は、自分がもつこの機能を人工的に作り出せないか、とずっと試行錯誤を繰り返してきました。このような、何かを計るためのセンサーを作る、ということも「分析化学」という化学の研究分野となります。
なかでも、測定物を壊したり汚したりしない「非破壊分析」という技術で混合物の濃度を計ることは、食品や生産物などの品質管理、機械の調子や化学反応の工程の監視など、様々な業種で必要とされています。このセンサーは、光と金属表面の自由電子と金属に接触している物質の屈折率が影響し合い、特定の条件の光が吸収される「表面プラズモン共鳴(SPR)現象」というものを利用して作られます。特に金を使ったSPR現象は、測定物を汚すことなく、光の速さで屈折率を知ることができるため、近年注目を集めている技術です。

ガラス棒がセンサーに変わる様子

混合物から計りたいものを選ぶ

選択膜をつけたセンサーの走査型電子顕微鏡写真

SPR現象は測定物の屈折率を計ることができます。でもいくつもの物質が混ざった混合物の場合は、どうなるのでしょうか?
混合物の場合、屈折率も全ての物質の影響を受けます。例えばブドウ糖と水とアルコールが混ざっていたら、このセンサーでは3つの物質の混合物の屈折率が測定されます。ただ、それだと今ひとつ面白くありません。SPR現象を利用するためにガラス棒の表面に金属の薄い膜をつけましたが、その上にもう一つ膜を追加してみましょう。この追加する膜は計りたい物質とそうでないものを選別するための膜になります。
写真はテフロンAF2400という特殊な膜をガラス棒と金の上に作ったものです。左側がガラス棒、右側がテフロンAF2400となります。金は薄すぎて電子顕微鏡でも見ることはできません。この膜は「多孔質」といって原子数十個分くらいの小さな穴がたくさん空いている膜で、この穴より小さな分子だけを選別して通すことができます。こういった膜を選択膜と言い、このように選択膜を追加する手法はセンサーの機能を拡張する最も一般的な方法です。
この研究では、このSPR現象を効率良く利用する方法や、いろいろなものが混ざった混合物から特定の物質の濃度だけを計るセンサーの開発を行っています。

Profile

化学生命工学プログラム

助教

満塩 勝

鹿児島大学大学院博士後期課程システム情報工学専攻修了。博士(工学)。専門は表面プラズモン共鳴現象を利用するセンサーシステムの開発。授業は分析化学に関する学生実験と、エクセルを使ったプログラミングに関する化学生命プログラミングを担当。猫が大好き。ハードウェアいじりからソフトウェア開発までパソコン関係全般が趣味。

学生(受験生)へのメッセージ

化学というと多くの人が医薬品や新規材料を合成している様子を思い浮かべると思います。しかし、化学の懐はもっと大きく、センサーのような装置の開発や数値シミュレーションなど多岐にわたっています。また、その分就職先も幅広く、研究・開発系だけで無く、電子機器関係や計量関係など様々な分野に行くことができます。
化学を志すのであれば、自分の視野を狭めず、いろいろな事に興味を持って勉強してみてください。きっと自分が思っている以上に世界が楽しく見えます。

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